片付けられないが、頑張って片付けた。
小一時間、片付けるだけで、ひどく疲れてしまう。
妻との思い出を、捨てるような気がして、心が苦しい。
そんな日が、続いていた。そして、心がどんどん辛くなってしまった。
これは、まずい。と感じ、しばらく、片付けるのを、やめることにした。
別に、無理して、片付けることは、ないじゃない。と周りの人に、言われた。
それで、気が楽にはなったのだが、私は、そうやって、遺品があって、色々と思い出すのも、辛いと思っていた。
片付けたら、辛いのだが、片付けなくても、それを見るたびに、辛くなる。
なら、思い出は、心の中にしっかりと刻んで、片付けたほうが、まし。
今も、まだ片付いてはいないのだが、少しずつ、遺品は処分することにした。
衣類などを、ゴミ袋に詰める作業も、苦痛だった。なんか、これ、着てたな。とか、あのとき撮った写真で、この服だったな、とか。
生前、あまり着れなくなった服を処分するときに言っていた言葉を、ポツリとつぶやいた。
「まあ、また、買ったらいいじゃん。」
お前がこれを、この世で着ることは、もう、ないんだし。今俺が着ているこの服も、俺が死んだら、もう、俺も、着ることは、ないんだよね。
んでもって、また、文句があれば、あの世で、なんで捨てたの!とか、言ってくれたら、いいさ。
「ごめんごめん、また、一緒に、買いにいこうな。」